インクルーシブデザインラボでは、株式会社リングァ・ギルドと協力し、アメリカ化学会の「障害をもつ化学者委員会」によって作成された文書の翻訳を行いました。障害者の科学への貢献、障害学生の支援に関わる理念、科学実験室における工夫と留意点、科学分野のキャリアの話題などが取り上げられています。
※コンピュータ利用についての章(4章)には古い情報が記載されていますが、その他の章に掲載されている科学分野における障害学生支援の考え方、法制、実験室における合理的配慮について、多くの有用な情報が記載されています。
追記①
化学会は、他の学問分野に先駆けて、70年代から障害学生の支援に取り組んできた歴史があります。障害学生の支援に関わるさまざまなトピックが記載されていますが、『障害をもつことが科学技術分野をあきらめる理由であってはならない』ということのメッセージとして、元素の発見における、障害をもつ科学者の貢献をとりあげています。最初の章に記載されている周期表では、障害をもつ科学者によって発見された元素が記されていて、一見の価値があります。
追記②
ヘリウムを発見したフランスの天文学者ピエール・ヤンセンは、子どものころに事故で歩けなくなり、学校には通えず、家で勉強をしていたそうです。16才から銀行で働き始め、空き時間に数学を学び、やがて大学で物理学の教授になります。ハンディキャップにも関わらず、その後生涯にわたり、世界各地を飛び回ります。1857年に赤道での観測のためペルーへ、ヘリウムの発見につながった1868年の日食の観測の際にはインドへ、1874年金星の太陽面通過の観測では日本の長崎にも訪れました。1870年の普仏戦争の際には、包囲された町から気球で脱出したというエピソードもあります。