History
2020年度
物的・制度的環境のインクルーシブネス向上
ガイドライン
ガイドラインの作成を目的に、学内関係者および学外有識者からなるワーキンググループを開催し、障害学生の権利、実験室の安全、視覚障害学生への合理的配慮について討論を行った。今年度中にもう1回実施する予定である。
インタビュー
障害を持つSTEM分野の教育・就労経験者についてインタビューを行っている。
事例集
障害を持つSTEM分野の教育・就労経験者を対象に、経験、ニーズ、好事例などを検索可能な形で収集するために、インタビュー調査と文献調査を総合し、事例集の作成を継続している。
建設的対話促進ツール
作業分析の方法の検討・実施体制の構築を行い、教養学部の基礎化学実験(1時間38分48秒)、基礎物理学実験(1時間29分55秒)の教育用動画を対象に分析を実施。
アクセシブル・キャンパスのコ・デザイン
株式会社GK設計、ヤマト科学株式会社の協力の下、研究者・当事者・エンジニア・デザイナーが共同して、今年度は好事例視察(TOTO・UD研/サンアクアTOTO、LIXIL、日華化学)、ヤマト科学提供の設備・什器3次元CADデータをもとにしたVR実験室を開発しつつある。来年度以降、これを公開し、国内外の当事者や関係者向けバーチャルラボツアーを実施して意見を集め、実際の実験室開発に活かしていく。また、キャンパス内移動をアクセシブルにするため、STUDIO ITO DESIGN、株式会社バリアフリーカンパニー、NPOインクルーシブデザインネットワーク、大同工業株式会社と共同し、自分で操作可能な階段昇降機を開発しつつある。
人的環境のインクルーシブネス向上
ユーザー・リサーチャー
当事者視点を活かした研究を行うユーザー・リサーチャー向けに、研究支援法の開発・実施を行った。ユーザー・リサーチャーのうち聴覚障害のあるMは、公益財団法人ECOMO財団助成事業に採択され、機内快適性に関する尺度を開発し、Hは「バリアフリー演劇」の取り組みを「日本博を契機とした障害者の文化芸術フェスティバル」にて報告した。発達障害のあるKは、内閣府ESRI国際共同研究事業のもと、「当事者研究の導入が職場の創造性に与える影響に関する研究」を行った。女子刑務所受刑経験のあるYは、日本国際賞平成記念研究助成のもと、法務省委託事業として札幌女子刑務所内に設置された回復支援センター構想に参加した。
学生・教員
インクルーシブ人材を養成するため、大学院生向けに、①ウェルビーイングの維持と問題解決を目的とする自己マネジメントスキル獲得、②ユーザー・リサーチャーとともに研究の共同創造を行えるようになる、③インクルーシブな研究室の実現に向けた提案を行える、という3つの目的をもつ講義を開発し実施した。学部生向けの講義、教員向けのFDも、他部局と連携し開発している。
学会活動
日本発達神経科学会第9回学術集会において、COVID-19の流行下で、AIやIoT、ロボット技術を活用して、安全かつ効率的、そして、障害のある学生や研究者にとってもインクルーシブな教育研究環境を実現する方法をテーマにオンライン基調講演及びシンポジウムを行った。日本認知科学会第37回大会や日本心理学会第84回大会にて、インクルーシブなキャンパスの実現や、共同創造に関して発表を行った。日本精神神経学会パラダイムシフト調査班において、連続2回の当事者研究に関する講義を行った。
アウトリーチと社会啓発・政策提言
アウトリーチ
当事者研究の知見を活かして、日本障がい者スポーツ協会と東京大学による「パラスポーツ先端研究・教育連携プロジェクト」に参画し、「ジュニアパラアスリート向けガイドブック」の作成に着手した。また、東京大学エクステンションに新設されたインクルーシブ・デザイン・スクールにおいて企業向け「当事者研究導入講座」の実施をおこなった。JSTの「SCIENCE IMPACT LAB For Social Implementation」においてインクルーシブな組織・社会の実現に向けたチームビルディングを行った。
社会啓発
サイエンスアゴラ2020セッション「ポストパンデミックが加速する新たな社会~Society5.0 の観点から」において共同創造に関する話題提供を行うとともに、「障害を持つ学生にひらかれた科学」と題して、STEM領域を中心に、東京大学のインクルーシブ・キャンパス実現に向けた取り組みを紹介した。当事者視点でみたスポーツのリスクと価値について、学術フォーラム「人生におけるスポーツの価値と科学的エビデンス 新型コロナ感染収束後の社会のために」や、日本財団パラリンピックサポートセンターパラリンピック研究会第36回ワークショップで話題提供を行った。
政策提言
障害のある研究者、産業界、学界などから多様なプロジェクトメンバーを得て、STEM領域の教育研究環境での障害のある学生や研究者の包摂を広く社会実装するために必要な事項について政策提言をするために、日本工学アカデミープロジェクト「インクルーシブなSTEM研究環境の構築」を開始した。
広報・ファンディング
東京大学特定基金「障害のある学生や研究者の活躍応援基金」を設置した。また、書籍「大学をひらく――障害のある人々とつくるキャンパス(仮題)」を、近日中に東京大学出版会から出版する予定。