History
2021年度
物的・制度的環境のインクルーシブネス向上
ガイドライン
ガイドラインの作成を目的に、学内関係者および学外有識者からなるワーキンググループを開催し、実験・実習における介助者の利用について検討した。
インタビュー
障害のある海外の理系研究者にインタビューを行った。インタビュー動画の一般公開に向けて準備を進めている。
また、前年度までに実施していた国内のインタビューの内容を、認定NPO法人「障害と病いの語りディペックス・ジャパン」のウェブページで一般公開した。
事例集
文献調査およびインタビュー調査をもとに、理系分野における障害に対する配慮事例を収集し、事例集を作成している。
建設的対話促進ツール
東京大学教養学部の基礎化学実験で行われる一連の作業を分割して表示し、個別に評価することができるオンラインプラットフォーム「学生実験支援ツール」を開発した。
アクセシブル・キャンパスのコ・デザイン
車椅子の当事者が設計に参加するインクルーシブデザインの方法論を用いて、アクセシブルな実験室流し台の開発を行った。この流し台とともに、車椅子でアクセスできる緊急用シャワーも、実験室内に設置した。
人的環境のインクルーシブネス向上
ユーザー・リサーチャー・プロジェクト
5名のユーザー・リサーチャーが、研究費・助成金獲得、法務省委託事業・経産省委託事業への協力、障害者雇用支援プログラム開発などを通じ、当事者視点での研究推進に貢献している。1名は、日本渡航医学会「第9回マルコポーロ医学賞」を受賞するとともに、AMED障害者対策総合研究開発事業「COVID-19流行下における聴覚障害者のICT利活用の実態調査及びその成功例をもとにした情報提供資材の開発」に参加した。
インクルーシブ人材育成
学内関係部署と協力して、ジェンダー、LGBT、エスニシティ、障害の領域をまたぐダイバーシティおよびインクルージョンに関する全学FD・SDプログラムを開発した。
また、11~12月に東京大学エクステンションインクルーシブ・デザイン・スクール「当事者研究導入講座」を実施した。
前年度までに開発した大学院生向けの授業も引き続き実施している。
学会活動
福祉のまちづくり学会、リハ工学カンファレンス、日本認知科学会、日本精神神経学会学術総会、日本科学史学会、科学基礎論学会、日本統合失調症学会などで、研究成果を発表した。
アウトリーチと社会啓発・政策提言
アウトリーチ
職場のインクルーシビティ向上を目指す企業に対して、各種プログラムを提供した。また、一般市民、障害のある当事者、教育関係者、医療・福祉関係者などに向けて、講演・シンポジウムなどのアウトリーチ活動を実施している。
社会啓発
日本学術会議公開シンポジウム「生命科学分野におけるジェンダー・ダイバーシティ」第3回「Disability Inclusive Academia:障害のある人々の視点は科学をどう変えるか」に参加した。
また、学術会議と相補的な民間組織を目指す日本科学振興協会の設立に参画し、社会へのアウトリーチ活動の準備を進めている。
政策提言
6月に日本工学アカデミー第3回政治家と科学者の対話の会で「インクルーシブなSTEM教育研究環境の実現に向けた取り組みと政策課題」と題して提言した。
広報・ファンディング
東京大学基金特定基金「障害のある学生や研究者の活躍応援基金」
いただいた寄附金をもとに、車いす利用者が自分で操作できる階段昇降機を、身体障害のある研究者のもとで開発した。また、手話通訳や文字通訳をリアルタイムで効果的に配信できるための専用スタジオを、聴覚障害のある研究者の監修のもとで設計・整備し、実際にシンポジウムなどで使用した。
科学研究費助成事業
学術変革領域研究(A)「当事者化の過程における法則性/物語性の解明と共同創造の行動基盤解明」を開始した。医学系研究科、経済学研究科、学外の研究機関と共同し、これまでに開発したインクルーシブ人材育成プログラムの効果検証を行っていく。