Members
綾屋 紗月
綾屋 紗月
AYAYA Satsuki
東京大学 先端科学技術研究センター 当事者研究分野 特任講師
自閉スペクトラム
物心ついた時から人の集団になじめず、「なんだか私は人と交われない。集団にいても楽しさが伝わってこない。いったい私は何者なんだろう」と思いながら生きてきました。2006年、アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)の存在を知り、診断名をもらいました。しかし診断された後から、周囲の人々とのコミュニケーション上の齟齬の原因を一方的に自分に押し付けられる経験が度重なり、現状の自閉スペクトラム症(ASD)の概念に疑問を感じるようになりました。

2008年頃から社会モデルの視点に立ってASDを再考するために、ASDの身体的特徴と、ASD児者を包摂する社会環境の条件について、在野で当事者研究を行いはじめ、その成果を書籍やエッセイ、論文などとして発表してきました。2011年以降は発達障害者向けの当事者研究会を定期的に継続し、多様な発達障害者の語りを収集・分析してきました。会での実践をもとに、発達障害者が安全に自己開示できるファシリテーション技法を開発し、多くの当事者グループや福祉施設、医療機関に取り入れられています。

2012年以降、当事者研究で提起された仮説を多分野の研究者とともに実証実験や支援法開発につなげる大型研究プロジェクト(新学術領域およびCREST)が採択され、その特任研究員として、発達障害領域の共同創造を行ってきました。その中で、共同創造を意味あるものにする上で、課題も見えてきました。また、研究への当事者参画が進むUC BerkeleyやUCLをはじめとした海外大学との連携も進めています。

2015年からは東京大学大学院総合文化研究科博士後期過程に進学し、当事者研究という日本固有の実践の歴史的背景と方法について研究し、その内容を博士論文としてまとめました。

研究の社会実装として、依存症自助グループ、聴覚障害者コミュニティ、刑務所、企業、大学内障害者支援機関などを対象にした当事者研究導入プログラムを開発し、東京大学エクステンション株式会社とも連携して提供をはじめたところです。